過敏性腸症候群

過敏性腸症候群(IBS)について

過敏性腸症候群過敏性腸症候群(IBS : Irritable Bowel Syndrome)とは、大腸カメラ検査などの検査では、炎症や腫瘍などの異常がないにも関わらず、腹痛や便通異常(便秘下痢・そのくり返し)が長く続く状態です。
これは大腸の知覚過敏や機能低下がおきていると考えられています。患者数は非常に多く、生命に関わるようなことはありませんが、日常生活に大きな支障が生じている場合も多くあります。

過敏性腸症候群の原因

根本的な原因はいまだに明らかになってはいません。ストレスや心理的異常、遺伝的要因、腸内細菌の影響、粘膜炎症後の後遺症などが関与するとされています。
実際にストレスを受けると、脳から腸に信号が伝わり、腸の知覚過敏のような状態がおこることが研究から分かっています。
またIBSの患者では、腸内に住みついている腸内細菌の種類や比率が異なることが分かっており、腸内細菌叢も原因の一つと考えられています。

過敏性腸症候群の症状

IBSは便通異常の種類によって、便秘型、下痢型、混合型、分類不能型の4つのタイプに分類できます。
またIBSにはうつ病や不安障害、顎関節症、機能性ディスペプシア、線維筋痛症といった疾患が合併しやすいことも注意が必要です。

過敏性腸症候群の診断・検査

診断基準としてRomeIV基準が用いられます。簡単にまとめると、「便秘や下痢が起きるときに腹痛がある状態が週に1回以上あり、それが3か月以上続く」ことでIBSと診断できます。実際には大腸カメラ検査などの精査をして、大腸がんなどの器質的疾患がないことを確認する必要があります。

大腸カメラについて

過敏性腸症候群の治療

生活習慣が乱れている場合には、適宜改善するよう必要がありますが、生活習慣の改善だけでは治療することは難しいです。
薬剤治療を中心とし、難治性の場合は心理療法や心身医学的治療が有効です。

薬物療法

下痢型や便秘型などのタイプに応じて使用する薬剤が異なります。現在では様々な機序の薬が存在するため、丁寧な問診を行い、個人個人におきている病態を把握することが大切です。いずれにしても便秘や下痢を改善し、腸管の知覚過敏を抑え、腸の運動を整えることを目指します。
これらの薬を用いても改善に乏しい時は、抗うつ薬や抗不安薬の使用も検討します。さらには腸内細菌の改善のために乳酸菌などの投与や、漢方薬を使うこともあります。

心理療法

心理的ストレスはIBSの主要な原因です。そのため、認知行動療法や催眠療法なども効果があります(心療内科を紹介いたします)。