大腸カメラの下剤の種類は?つらい・飲みきれないときの対処法を解説!
大腸カメラでは、検査当日に液体の下剤を内服し、腸管の中を洗い流しキレイにする必要があります。洗浄が不十分で腸管内に便がのこっていると、十分な観察ができず、病変の見逃しにつながってしまいます。
この検査前の準備は水も含めれば2-3L程度の液体を飲む必要があり、「つらい」「飲みきれない」と不安になってしまう方もいるのではないでしょうか。
実際に大腸カメラの下剤は美味しいものではないですし、場合によっては大量に飲まなければならないときもあります。
この記事では、大腸カメラの下剤の種類や、下剤を飲むのがつらい理由や対処法、比較的飲みやすい下剤について解説します。また、胃カメラを使用し、下剤の内服をしなくて済む方法も解説します。
大腸カメラの下剤の種類
ここでは、大腸カメラの下剤の種類について詳しく解説します。
薬剤によって、腸管洗浄の強さ、味、内服量、飲み方などが変わってきます。当院で採用している下剤も含めて解説していきます。
サルプレップ
サルプレップは、苦いレモン味をした下剤です。洗浄力もとても優秀です。下剤とは別に2Lの水を内服する必要がありますが、下剤自体は1L程度の内服ですみます。
特徴はペットボトル入りになっており、他の下剤のように水を混ぜて、自分で作成する必要がありません。
また、サルプレップの大きな利点は2日に分けることが可能なことです。大腸カメラ検査前の下剤は家などで内服する場合、検査の5時間程度前から内服する必要があります。例えば、朝9時から検査を行いたいとしても朝4時に起きて下剤を飲み始めるのは大変です。
サルプレップは1本を前日の夜に、1本を朝に内服するということが可能なため、朝6時頃からの内服で検査可能です。
サルプレップのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット:薬剤を溶かす手間がない/2日に分けて内服も可能
- デメリット:味が濃い(苦いレモン味)/腎臓機能が低下している場合内服できない
上記のように、午前中早い時間での検査では非常に有用です。下剤としての能力もモビプレップに負けず劣らずのため、単純に味で選んでも良いでしょう。
下剤自体はモビプレップの半分の量で十分ですが(その分、水はモビプレップの倍量必要)、味はその分、濃いです。苦くて濃いレモネードのような味で、ダメな人は本当にダメという印象があります。
腎臓機能が低下している人は内服できないことも注意が必要です。腎臓機能が低下しているか不明な方もいるため、安全性も考慮して、当院ではモビプレップを第一に使用しています。
モビプレップ
モビプレップは濃い梅味のスポーツドリンクのような味で、水と交互に内服していく必要があります。腎臓や心臓が悪くても安全に内服できます。
上野消化器内視鏡クリニックでは、特別な場合を除き、このモビプレップの内服をすすめています。モビプレップは腸の洗浄力が最もすぐれています。
他の下剤では便がキレイにならず、いつまでも検査ができないといったこともありますが、モビプレップでは、このような事が少なく、また便で観察を邪魔されないため、質の高い大腸カメラ検査を行うことが可能です。
パックに水を入れて2,000mLにし、1,000mLを1時間かけて飲むのが一般的で、飲んだ量の半分量の水分を取ります。実際には1200-1500mL程度で腸がキレイになる方がほとんどです。この場合は、キレイになった時点で下剤の内服は終了となります。
モビプレップのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット:洗浄力が最も強い/腎臓や心臓に影響を与えない
- デメリット:味が濃い
モビプレップは洗浄力も強く、安全に内服可能であるため、非常に優れたバランスの良い下剤だといえます。
ニフレック
ニフレックは、少し塩味を加えたスポーツドリンクのような味の下剤です。2000mL内服する必要があります。
ニフレックのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット:服用方法が簡単/洗浄力が強め/腎臓や心臓に影響を与えない
- デメリット:味に癖がある
ニフレックもとても優れた下剤の一つです。何より、モビプレップと同様で腎臓や心臓への影響がなく安全です。
また、水と交互に内服する必要もないので、何も考えずに目の前の下剤を飲み切れば良いというシンプルさは魅力的です。
モビプレップより、劣る点は洗浄力です。ニフレックも下剤の中では洗浄力が強い方ですが、2L内服しても完全はキレイになり切らない場合があります。
当院でも状況に応じてニフレックを使用する場合があります。
ピコプレップ
ピコプレップは、オレンジ風味で下剤の中では味が良く、飲む量も少なくて済むという非常にうれしい特徴がある下剤です。
しかし、その反面、腸管洗浄力が弱いので腸の中が十分にはキレイにならないことがあります。
水に溶かした製剤150mlを前日と当日の2回に分けます。前日は服用後に透明な飲み物1,250ml以上を2~3時間ほどで飲み、当日は服用後に透明な飲み物750ml以上を1~2時間ほどで飲みます。
ピコプレップのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット:オレンジ風味/下剤を飲む量が少ない
- デメリット:洗浄力が弱い/2回の服用が必要となる
他の下剤よりも、味の面でも量の面でも優れていますが、やはり腸管洗浄力の弱さから人を選ぶ下剤です。
上記の理由があり、若くて便秘のないような方であれば選択肢にはなりますが、検査の質を担保する上で選びづらいです。
マグコロールP
マグコロールPは、スポーツドリンクのような味をした下剤です。1800mLを飲む必要があります。
マグコロールPのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット:下剤の中では飲みやすい
- デメリット:洗浄力が弱い/腎臓が弱い人は飲めない
マグコロールPの最大の利点はその味です。スポーツドリンクのような味で、少し甘味があります。下剤の中では癖が少ないですが、あくまでも下剤の中での話ですので、美味しいという類のものではありません。
無視できない欠点が、洗浄力が弱い点や、腎機能しだいで内服できないことです。洗浄力が弱いため、飲み切っても便がまだ汚い場合もあります。その場合は追加で下剤を内服する必要があり、時間がかかります。
病気もなく、若くて便秘がない方には選択肢の一つかと思います。
ビジクリア
ビジクリアは、錠剤と水分を一緒に飲むことで腸内をきれいにできる下剤です。
50錠の錠剤と2,000mlの水分を約2時間30分かけて飲むのが一般的で、5錠をコップ1杯で15分かけて飲むのを10回繰り返します。
ビジクリアのメリットとデメリットは以下の通りです。
- メリット:薬剤を溶かす手間がない
- デメリット:大量の錠剤を服用しなくてはならない/洗浄力が弱い
水やお茶で飲めるため、下剤の味を感じなくて済むメリットがあります。しかし、大量の錠剤を服用しなくてはならないことや、腸管洗浄力がやや弱いことが欠点です。
比較的飲みやすい下剤
比較的飲みやすい下剤の種類は以下の通りです。
- ピコプレップ:2回に分けて飲める
- モビプレップ:もともとの飲む量が少ない
- マグコロールP:最も飲みやすいとされる
- ビジクリア:量は多いが錠剤で飲みやすい
下剤の量が多くて飲めないという方は、2回に分けて飲めるピコプレップやもともとの飲む量が少ないモビプレップ、最も飲みやすいとされるマグコロールPが適しています。
液剤をそのまま飲んだり水に溶かして飲んだりするのが苦手な方は、量は多いものの錠剤タイプでリズムよく飲めるビジクリアがおすすめです。
ただし、医療機関によって用意している下剤は異なるため、必ずしも求めている下剤が置いてあるとは限りません。
どうしても気になる方は、大腸カメラを申し込む際に、どのような下剤を用意しているか確認しておきましょう。
また、ここでは比較的飲みやすい下剤を紹介しましたが、そもそも下剤自体が苦手という方もいるため、あくまでも個人的な感想に左右される点はご留意ください。
下剤がつらい・飲みきれない理由
そもそも、なぜ下剤に苦手意識を持つ方が多いのでしょうか。ここでは、下剤がつらい・飲みきれない理由について解説します。
下剤そのものの味が不快なため
下剤に苦手意識を持つ方の多くは、下剤そのものの味を不快に感じていることが多いです。
下剤の種類を見てみると、レモン味やオレンジ味など柑橘類の風味がする下剤もありますが、人によってはその風味自体が苦手な場合もあります。
スポーツドリンクのような風味で知られる下剤もありますが、同じく味が苦手で飲むのが億劫になるケースも珍しくありません。
大量に摂取しなければならないため
下剤に苦手意識を持つ方のなかには、大量に摂取しなければならないことを理由に「つらい・飲みきれない」と感じる場合もあります。
下剤によっては、何百ml(最大2L)もの製剤を飲むのに加えて水分も飲まなくてはならないため、全部飲めずに心が折れてしまうこともあるようです。
少なからず体へ負担はかかるため、途中で嫌になる人もいるでしょう。
それでも下剤を飲まなければ腸内をきれいにできないため、大腸カメラそのものに苦手意識を持つことも珍しくありません。
下痢や頻尿になりやすいため
下剤を飲むことで発生する下痢や頻尿そのものに苦手意識を持つ方もいます。
大腸カメラは腸内をきれいにしておかなければ正常に検査できないため、腸内に溜まっている排泄物をすべて排泄する必要があります。
しかし、その過程で訪れる下痢や頻尿は本人しかわからない苦痛があるでしょう。
いうなれば「お腹を下しているときのような状態」が数十分~数時間続くと考えると、下剤を飲みたくないと考えてしまうのは仕方ないともいえます。
下剤がつらい・飲みきれないときの対処法
下剤がなかなか飲めないときはどのように対応すれば良いのでしょうか。ここからは、下剤がつらい・飲みきれないときの対処法について解説します。
飲みやすい下剤から選ぶ
下剤がなかなか飲めない場合は、飲みやすい下剤から選ぶようにしましょう。
例えば、1回の服用量が少なく済むサルプレップ・ピコプレップ・モビプレップは、数ある下剤のなかでも比較的飲みやすい部類の製剤です。
また、マグコロールPも服用方法が簡単で飲みやすく、抵抗感なく服用できるでしょう。
下剤によって飲みやすいものとそうでないものがあるため、どうしてもつらい・飲みきれない場合は、飲みやすそうなものから選んでみてください。
普段から飲み慣れているもので飲む
下剤によっては好きな透明な飲み物と一緒に服用できるものもあるため、普段から飲み慣れているもので飲むのも良いでしょう。
代表的なところだと、水がおすすめです。水は雑味がないシンプルな飲み物であるため、飽きずに飲み続けられます。
クセもないため、1,000〜2,000ml単位で飲まなくてはならない場合であっても、負担は軽減できるでしょう。
下剤を飲まなくていい方法を選ぶ
どうしても下剤を飲むのが苦痛な場合は、下剤を飲まなくていい方法もあります。
上野消化器内視鏡クリニックでは、下剤を飲まない大腸カメラ検査も実施しています。
下剤を飲まない大腸カメラ検査は、大腸カメラ検査の前に胃カメラ検査を行い、胃の状態を観察した後に胃カメラを通して1.5Lの下剤を注入する方法です。
胃カメラと同時に注入できるため、別途で下剤を飲まなくて済みます。ただ、水は600~800mL程度飲んでもらう必要があります。
注意点としては、胃カメラも同時に受ける必要があります。大腸カメラだけの場合は選択できない方法です。
また、通常であれば2時間程度かけて内服する下剤を短時間で注入するため、やや体に負担がかかります。そのため、ご高齢の方や体力に不安がある方も実施できません。
基本的には、普通に下剤を飲んで、どうしても苦手の場合の選択肢として考えるぐらいがちょうど良いかと思います。
まとめ
大腸カメラに下剤はつきもので、大腸カメラ検査を行うためには大量の下剤を服用しなければなりません。
しかし、下剤が「つらい」「飲みきれない」という意見も珍しくなく、人によっては下剤を飲むのが苦痛という理由で検査自体を受けたくないと感じてしまいます。
一方、日本人は大腸がんで亡くなる方が多く、違和感がある場合は早急な検査が必要になるため、大腸カメラで定期的に検査しておくことは重要です。
上野消化器内視鏡クリニックでは、下剤を飲まずに大腸カメラ検査を行う方法をご用意しております。
下剤を飲まない大腸カメラ検査であれば、苦手な下剤を飲まなくて済み、腸内がきれいになるまでの時間も短縮できます。
また、胃カメラ検査と大腸カメラ検査を同時に受けられるため、一度で検査を終わらせたい方にも最適です。
ただし、人によっては下剤が必要となる場合もあり、一定の水分を摂取しなければならないためご注意ください。
何か不明点がある方は、お気軽にご相談ください。